生きるために不必要で大切なもの[Rental Heart Cafe self-cover] -5ページ目

体内天気

生きるために不必要で大切なもの[Rental Heart Cafe self-cover]-050328


体内天気は晴れ時々曇り

今ひとつ完璧じゃない



炭酸が抜けて

甘さだけが残ったサイダー

炭酸なんて無味な脇役

なのに見るからに情けない主役



弦が切れたギター

3弦を4弦に巻いた理由は

Dの解放を

弾きたかったから



鶏ガラだしのスープづくり

トリは食べなくても残酷じゃない

液体より固体が偉いという常識

僕は液体にならないという誤算



かさぶたがはがれるまで

待てる男と待てない女

他人のかさぶたにまで

とやかく干渉しないでくれないか



体内天気は曇りのち晴れ

予報は50%だけ信じる



No.0212
050328

白い花の理由

生きるために不必要で大切なもの[Rental Heart Cafe self-cover]-050327


いや、その、それはですね‥‥。
今日はいい天気じゃないですか。
なんといいますか‥‥、
ここに来る途中にですね。

爽やかな初夏の陽射しがですね。
花屋の店先に踊るように、
降りそそいでいたわけですよ。
家から駅までの商店街にある花屋さんでして。

お店の前の舗道に丁寧に撒かれた、
使いついでの打ち水がですね。
午後のそれとは勝手が違って、
なかなか空に散っていかないようでして。

足もとの水たまりを、そおっと避けるついでにですね、
きっと買うつもりはなかったんですが、
ちっちゃな白い花の匂いをかいでみたんですよ。
花の名前も知らずに‥‥。おかしいですよね。

実のところは‥‥、上目遣いでこそこそと、
あの人のことをさがしていたんです。
はぁ‥‥、その‥‥、あの人というのは、
まぁ‥‥、美しくて上品な‥‥、いわゆるお店の人でして。

いつからかあの人と会釈を交わすようになって、
今やそれが一日の始まりなんです。
ささやかな片想いとでもいいますか。
それが、今日は姿が見あたらなかったものだから。

少し調子に乗ってあの人を探していたら、
僕より先にあの人が僕を見つけてしまいまして。
当たり前に接客されたものだから、
それはドギマギしてしまいまして。

それで、がらにもなく、花なんかをですね、
抱えてくることになっちゃいました。
つまり、それがこの花の理由です。
あの‥‥給湯室に花瓶などありますか?



No.0211
050327

引力のような存在

鏡の前でこころを
スケッチしてみる

勇気が必要ね‥‥かなり
まっすぐに向き合うために


湾曲する鏡面
屈折する光

ぼくのこころは
みにくさのしょうちょう


なんだろう
この感じ

とりつくろいたい感じ
言い訳できない感じ

生きるために不必要で大切なもの[Rental Heart Cafe self-cover]-050326

鑑定士ににこころを
差し出してみる

覚悟が必要ね‥‥とても
息を呑んで向き合った


見せかけの知識
誇張する虫眼鏡

ぼくのこころは
あきらかなまがいもの


なんだろう
この感じ

あきらめきれない感じ
負け惜しみな感じ



いっそのことぼくは
とてつもなく大きな存在を
認めてしまえば楽なのにと思った



No.0210
050326

お願いだから

生きるために不必要で大切なもの[Rental Heart Cafe self-cover]-050325



お願いだから
ちゃんと言うこと聞くから


お願いだから
絶対に困らせないから


お願いだから
もっといい子にするから


お願いだから
なんでもするから


お願いだから
いなくなっちゃわないでください



No.0209
050325

喪失感

生きるために不必要で大切なもの[Rental Heart Cafe self-cover]-090601



逢いたくて

逢えなくて


日々を淡々と

積み重ねて


それほどには

生きたくないのに



今夜も暑くて

窓を開けた


せいぜい

半径50kmの人生


世界の全部を

僕は知らない



逢いたくて

逢えなくて


僕はここに

ここにいていいの?


知りたくて

教えてくれない



想いの重さと

現実がつりあわず


いやもおうもなく

喪失感に襲われるとき


もはや言葉は

空虚を埋める術をもたない



070806

僕の居場所

生きるために不必要で大切なもの[Rental Heart Cafe self-cover]-050324



色々なことが
わからなくなっちゃった



頭で考えようとして
こんがらがっちゃった



失敗とか挫折とか
いつも誰かのせいにして



自分をよく見せようと
他人に噛みついてしまって



防衛本能なのかな?
ダメ人間なのかな?



ほんとはわかってる
ほんとにわかってない



どうしてとやかく言うの?
ほっといてほしいのに



どうして何も言わないの?
かまってほしいのに



薄っぺらい葛藤など
すべては見抜かれていて



僕の居場所は
もうどこにもないみたい




No.0208
050324

ネクスト

生きるために不必要で大切なもの[Rental Heart Cafe self-cover]-050323



呼吸のしかたがわからない
血管が蛇になる
眼球をラップで包まれる
指先は電極になる


座っても立っても
歩いても休んでも
鼓動しか聞こえない
足が宙(そら)に浮いている


なにかが導線を遮(さえぎ)る
なにかがなにかをつぶやいた?
「楽にやんなよ」
そう聞こえたような


時間が流れない一瞬に
笑顔の設計図を広げた
こしらえた表情は
黒い壁に反射した


名前を呼んだ?
言葉を忘れてしまって
返事ができないんだ
誰の名前を呼んだの?


僕なの?
僕じゃないよね?
僕かもしれない
僕ならば大変だ


行かなくちゃ‥‥
行かなくちゃ‥‥
行かなくちゃ‥‥
行かなくちゃ‥‥




No.0207
050323

ここ

生きるために不必要で大切なもの[Rental Heart Cafe self-cover]-050322



電子顕微鏡で
たどりつく世界より


もっと小さな世界が
きっとあって


天体望遠鏡で
追いかける世界より


もっと大きな世界が
きっとあって


だからどうという
ことではないのだけど


あなたとぼくが同じ世界にいる
それはなによりも嬉しいことなんだ




No.0206
050322

水の空気

生きるために不必要で大切なもの[Rental Heart Cafe self-cover]-050321



穏やかな


海の底に寝そべって


空を見上げた



空というより天井


ガラス色というべき


青い磨りガラスの色



光の結晶が


突き刺さっていた


まっすぐに‥‥



小さい魚が


キラキラと飛んでいた


高く高く



ほんの一瞬‥‥


ほんの一瞬だけ


細胞が海に混ざったけど



生きることと


死ぬことの


意味は混ざらなかった




No.0205
050321

鉄の扉

生きるために不必要で大切なもの[Rental Heart Cafe self-cover]-050320


またあの夢を見た

ところどころがリアルで

ところどころが嘘っぱちで

映画のセットのような

薄っぺらい世界に

扉がある





鉄だと思う





重く錆びついていそうな

扉の前に

たどりつく

重く錆びついていそうな

扉の前で

立ちつくす





衝動と恐怖





開けたことはない

開けてはいけない

理由はわからない

開けられない

不器用に立ちつくす

目覚めるまで立ちつくす





そして目覚める





またあの夢を見た



No.0204
050320